6の月23夜☽飲み込まれた音

スポンサードリンク

声なしは、彼女の村のメディスン族の間でも謎でした。一度もしゃべったことがなかったのです。ずっと、全く声を出したことがなかったので、家族は彼女が話せるようにはならないだろうとあきらめていました。聞くことはでき、仕種で意志の疎通はできましたが、儀式で感謝の歌を歌ったり祈りを捧げることは、彼女にはできないだろうと思われていたのです。

 

声なしが生を受けたとき、それはたしかに尋常ではありませんでした。村が敵の戦士に襲われた恐ろしい参事のさなかに彼女は産まれました。彼女の母親は、彼女をこの世に迎え入れるため柳の木の下に逃げなければなりませんでした。そして父親は、村を守るために戦って命を落としたのです。

 

7つめの冬を迎えたある日、声なしは病気になりました。腐った物を食べてもがき苦しみ出したのです。メディスン・マンが呼ばれました。声なしが胃を痙攣させると不思議なことが起こりました。腐った食べ物と一緒に声が飛び出したのです。声はどんどん出てきました。驚いた家族が聞いたのは、傷つき恐怖におののく村人たちの叫びでした。

 

聖人はにっこり微笑みました。そして、泣けば自分も母親も殺されると知り、生まれたばかりの彼女は音を飲みこんでしまったのだ、と説明しました。胃痛が彼女の恐れを吐き出させ、彼女を癒したのです。声なしはしゃべる能力を回復したので、新しい名前を授かりました。彼女は今では怖いものなしと呼ばれています。

 

実は深いお話です。声なし怖いものなしになったというユーモアだけではありませんね。あなたも何かを抱えて生れ出たかもしれません。もしくは今まで生きてきた段階で何かを飲みこみ、制限しているかもしれません。恐れ、怒り、迷い、、、胃は痛くないですか?

人は尊い存在です。誰かは誰かのために、常に場の空気を感じています。でもそれだけでは苦しくなります。私たちすべての内に棲む神に同調し任せてみること。これが鍵となります。その鍵をそのままに回してみたら、すべての人々は怖いものなしになれるのではないでしょうか。