6の月11夜☽波の物語

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子どもたちは波打つ海を崖から眺め、祖母の穏やかな語り声に聞き入りました。祖母は籠から貝殻を取り出し、貝殻の中に生きている波の音を聞かせました。そして、自分の想いに耳を傾けることを、人族は貝族から学んだのだと語りました。

 

好奇心の強い子どもがその意味を問うたので、祖母は子どもたちを浜辺に連れ出しました。途中で子供たちに花を摘ませ、それを海に向かって投げさせました。そして、この花と同じように、ひとりひとりの心にある想いは世界に放たれ、やがてはその送り主に戻ってくるのだと教えました。

 

子どもたちが見つめるなか、花のいくつかは溺れ、いくつかは浜に打ち上げられました。海まで届かず砂浜に落ち、波が迎えに来てくれるのを待つ花もありました。

 

浜辺に落ちた花と同様に、よい想いも人の海に届くように送り出さなければ、他人と分かち合うことはできず、恵みとして帰ってくることもないのだと祖母は言いました。

 

また、溺れた花はよくない想いの象徴。塩辛い涙で洗い流される必要があったのです。他人に害を与える想いは世界に送り出すべきではない、と祖母は語りました。なぜなら、それも、やがてお返しとなって戻ってくるからです。

 

波のてっぺんに乗った花は、人のさまざまな想いの力強さの象徴。愛に満ちた笑いや涙で分かち合われた想いは、海の満ち干のように旅を続け、やがて「認識」の波に運ばれ、心の故郷たる浜辺に帰ってくるのです。

 

 

このようなお話は古代インディアンでなくてもいろいろあると思いますが、花のたとえはわかりやすいと思うので、いつか子どもたちに話して聞かせてみようと思います。