8の月20夜☽人の糸、心の琴線

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8TH MOON 癒し

他の部族の野蛮な戦士につかまった森の歌は、家族が助けに来てくれると信じていました。ほとんど水も食べ物も与えられず南に行進させられ、悪夢の日々は月々に至りました。なぐられ無理やり歩かされ、彼女のからだは消耗し尽しました。毛布の安らぎのない寒い夜が凍えさせたのは、彼女のからだだけではありませんでした。

 

ついに、森の歌は助けられる希望を捨て、神経は麻痺し、生きる望みもなくしました。その日から、毎日、彼女は自分を人生につなぎ留める心の琴線を切っていきました。希望の喪失と絶え間ない暴力で、彼女の心の琴線は傷み、ぼろぼろでした。彼女は、歩き続けられないほど弱った者が捨てられ死んでいくことを知っていました。

 

ある朝、森の歌のやせ細ったからだは、彼女を虜にしていた麻の縄をすり抜け、岩とサボテンだらけの土手に転がりました。乾きから彼女の唇は血を流し、ハゲタカがその上空を舞いました。弱った心の琴線は次々と切れ、彼女は死の瀬戸際でした。

 

自分が女の子だから家族に愛されなかったのだという想いから、家族につながる心の琴線の最後のひとすじを切りかけたとき、彼女の顔を影がおおいました。唇に何か塩辛いものが触れました。目を開けると、そこには涙を流す兄の顔がありました。愛の腕が彼女を抱きしめ、人生の糸はつなぎ留められました。彼女は生き残り、癒されます。そして家に帰るのです。彼女には自分が愛されていることがわかりました。暴力で頑なになっていた彼女の心は、愛の心の琴線で森の癒しの歌を奏でるメディスにとって代わりました。